【不登校】学校に行けない理由|3つの通学ストレスと対処法とは?

鍼灸治療室には、本当にさまざまな症状を抱えた患者さんがいらっしゃいます。

今日はその中でも「学校に行けなくなった子ども」についてお話したいと思います。
「行かなくなった」のではなく、「(本人は行きたいのに)行けなくなった」子どもです。
「通学していない」という現象は同じですが理由が全く変わってきます。

鍼灸治療室・クリスタに治療にいらっしゃるお子さんの中で、「学校に行けない」という方の原因は、以下の3つの「通学ストレス」に大別できます。

1)通学時間が長く疲れ切った
2)通学電車の混み具合に耐えられない
3)通学途中での性的被害によるトラウマ(痴漢など)

この3つのうち、1)と2)は東洋医学で改善可能です!

・食生活の見直し
・自宅でのケア(お灸など)
・運動法

そこでこの記事では、学校に行けない理由と対処法について、東洋医学の知見からわかりやすくご説明していきましょう。

学校に「行けなくなった」原因の多くは「通学ストレス」

あなたのお子さんが、学校へ行けなくなったとしたら……そのとき考えられる理由は、どんなものですか?

まず思い浮かぶのは、「いじめ」でしょうか。
そうしたつらい状況で、学校へ通えなくなるお子さんも多いと思います。

ただ実は、わたしの鍼灸院・クリスタに「不登校」のご相談でいらっしゃる患者さんのほとんどは、学校内での問題が原因というよりも、「通学」による過度なストレスで通えなくなっているというケースです。

具体的には、

1)通学時間が長く疲れ切った
2)通学電車の混み具合に耐えられない
3)通学途中での性的被害によるトラウマ(痴漢など)

この3つの原因にまとめられます。

これは、うちが鍼灸治療院であるためでしょう。

アトピーや頭痛、不眠など、身体的な不調で親御さんに連れられてきたお子さんが、治療を進める中でなんとなく学校の話になり、通えなくなった理由をみずから話してくれた結果が上記です。
(わたしからは、理由はいっさい聞きません)

ただ、実際に文部科学省発表の統計でも、不登校になるきっかけでもっとも多いのは「不安・抑うつ」「体調不良」などで、「いじめ被害」の倍以上〜3倍近くを占めることがわかっています。

【不登校児童生徒に聞いた不登校のきっかけ要因(複数回答)】

出典:文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究 報告書」(2024年3月公表)をもとにラクニナで編集

学校に行けなくなる3つの通学ストレス

この「学校に行きたいのに行けない」原因となる3つの通学ストレスについて、もう少し説明しておきましょう。

1)通学時間が長く疲れ切った
2)通学電車の混み具合に耐えられない
3)通学途中での性的被害によるトラウマ(痴漢など)

まず1)と2)は、通学することにエネルギーを使い果たして疲れ切ってしまい、学校生活を送ることができなくなる状態です。

・行きたくても身体が動かない
・朝起きられなくなる
・微熱が続く

などの症状が出てきてからの不登校、というコースをたどるお子さんがいることを、ぜひ知っておいてください。

特に、電車通学など通学時間が長いと、どうしても睡眠時間が減るのでより一層その傾向は強まります。
その子のもともとの性質が繊細だったり、聴覚が良すぎる場合は、からだにダメージが大きく出るでしょう。

そして3)ですが、許せないことながら悲しい事実としてたしかにあります。

女子だけでなく、男子の被害も多発していて、男子は女子よりも被害にあったことを親御さんに言えないことが多いです。
親御さんは、学校に行けないことを責めずに、お子さんに寄り添ってよく話を聞いてあげてください。

通学ストレスへの対処法

では、「学校に行きたいのに、通学ストレスのせいで行けない」というお子さんには、どう対応してあげればいいのでしょうか?

【学校に行けない原因となる3つの通学ストレス】
1)通学時間が長く疲れ切った
2)通学電車の混み具合に耐えられない
3)通学途中での性的被害によるトラウマ(痴漢など)

このうち3)の性的被害は、残念ながら東洋医学では解決できません。

たとえば家族や信頼できる年長者と一緒に通学する、学校に事情を伝えて時差通学する、スクールカウンセラーなど専門家に心のケアをしてもらうなど、できる限りのサポートをして、安心できる通学環境をつくってあげてください。

一方、1)と2)は東洋医学で改善することが可能です!

その方法を簡単にまとめましたので、以下を見てください。

【通学ストレス別対処法】

通学ストレス対処法
1通学時間が長く疲れ切った・食生活の見直し
・自宅でのケア(お灸など)
・運動法
2通学電車の混み具合に耐えられない
3通学途中での性的被害によるトラウマ・安全に通学できる環境を整える
・専門家に心のケアを受ける など

1)2)の理由から学校に行けなくなったお子さんの場合、基本的にからだのエネルギーが不足していたり、めぐりが悪かったりします。
その結果、身体的な不調が現れるわけです。

そこで、以下の3点に並行して取り組みましょう。

・食生活の見直し(食べると体調が悪くなるものを知り、体調にいいものを食べる)
・自宅でのケア(ツボにお灸するなど)
・運動法

これにより、お子さんの活力が戻ってきます。
それぞれ簡単な方法の一例をご紹介しましょう。

食生活の見直し

食生活でまずしてほしいのは、以下のことです。

・からだに合わない食べものを見つけて、それを避ける
・食事はよく噛んで、早食いしない
・甘みを控える
・「たまご味噌」を食べる

◎からだに合わない食べものを見つけて、それを避ける

からだに合う食べもの・合わない食べものは人によって異なります。
合わないものを食べると、腸内でうまく消化されずにお腹の具合が悪くなったりしますので、まずは「お子さんに合わない食べもの」を見つけることが第一です。

それには、日々の食事と体調の変化をよく観察・記録してください。

お子さんが、食べたあとに具合が悪くなったメニューがあれば、その食材をメモしておきます。
それを2週間ほど続けて、「このメニュー(または食材)を食べるといつも体調が悪くなる」というものを見つけたら、しばらくの間はそれを食べさせるのをやめてみましょう
それで体調が改善されるようであれば、その食材はお子さんには合わない、ということです。 

たとえば、一般的にはからだによいといわれている食物繊維の多い食材でも、体質によっては負担になることも多くあります
「よいといわれるもの」を取るよりも、「からだに合わないもの」を見つけて避けることを心がけてください。

◎食事はよく噛んで、早食いしない

食べたものをきちんと消化して栄養を十分に吸収するためには、よく噛んで食べることが大切です。

よく噛まずに早食いすると、小腸での栄養の吸収が追いつかず、未消化の食物が大腸に送り込まれてしまいます。
それが腸内細菌の餌となって異常発酵、ガスの大量発生がおこり、 おなかの張りや便秘、腹痛などにつながってしまうのです。

そうならないために、食事どきにはお子さんがゆっくりよく噛んで食べるよう見守ってあげてください。

◎甘味を控える

甘いものが好きなお子さんは多いですが、お菓子やジュース、アイス、フルーツなどは食べすぎないようにしてください。

体調不良の原因が、糖分の摂りすぎというケースは多いです。
というのも、糖質を分解してエネルギーにする際には、ビタミンB1が必要なのですが、糖質過多になると、このビタミンB1が使われすぎて不足してしまいます。
そうなると、疲れやすくなったりだるさを感じたりするのです。

「甘いものが好きでよく食べている」というお子さんは、まずは摂る量を3分の2に抑えるところから始めて、徐々に減らしていくといいでしょう。

◎「たまご味噌」を食べる

体力をつける食べものとして特におすすめしたいのが、「たまご味噌」です。
たまごと味噌を火にかけて練るだけの簡単なものですが、からだをあたため、弱った体力を回復させる効果が期待できます。

実際に、わたしもこれを毎日食べることで、体調がよくなりました。
くわしいレシピや効果などは、以下の記事に書きましたので、ぜひ読んでお子さんにも食べさせてあげてください!

自宅でのケア

自宅でできるツボ押しやお灸などのケアもおすすめです。
今回は、腸のはたらきを整えるツボをご紹介しておきましょう。
市販のお灸を貼れば、簡単に温めて刺激することができます。

【市販のお灸の使い方動画】

◎「天枢(てんすう)」

おへその横、指3本分のところ(左右とも)にあるツボです。
消化器のはたらきを整えるとされ、おなかの張り、腹痛、下痢、むくみなどに効果が期待できます。

◎「中脘(ちゅうかん)」

みぞおちとおへそを結んだ線の真ん中にあるツボです。
胃の不調を整えるとされ、消化不良、食欲不振、下痢、胃痛などの改善が期待できるほか、疲労回復にもいいでしょう。

◎「関元(かんげん)」

おへその下、指4本分のところにあるツボです。
胃腸のはたらきを整え、からだを「元気」にするとされ、胃腸の不調、腹痛、便秘、下痢、疲労感、だるさなどの改善が期待できます。

◎「神闕(しんけつ)」

おへそを指します。
消化器系を整えるほか、自律神経や全身のエネルギーもつかさどるツボとされています。
消化不良、腹痛、便秘、下痢、冷えなどの改善や、免疫力の向上、精神の安定などにも効果が期待できるでしょう。

運動法

お子さんの体調を整える運動法はいろいろあります。
ここではそのいくつかをご紹介しておきましょう。

◎朝起きるときの運動

起床時に行ってほしい運動です。
以下の手順で行います。

1)横になったまま、「全力で手のひらをグーパー」するのを10回
2)両足首をパタパタ10回
3)両膝の曲げ伸ばしを5回
4)ゆっくりした動作で起床

これでからだの中の血や水のめぐりがよくなって、すっきり起きやすくなるでしょう。

◎歯磨きで筋トレ

起きられたら、次は歯磨きしながらの筋トレがおすすめです。
かかとの上げ下ろしを繰り返すだけの運動です。

1)かかとを5秒かけてゆっくり上げる
2)上げ切ったら、5秒かけてゆっくり下ろす
3)これを、歯を磨いている間繰り返す

速いスピードではなく、ゆっくり行ってください。
これにより、ふくらはぎの筋肉が鍛えられます。

ふくらはぎの筋肉は、下半身に下がった血流を上半身に送り込むポンプの役割をする重要な部位ですので、この筋力がアップすることで血流も改善されるでしょう。

◎家事のお手伝い

せっかくおうちにいるのであれば、家事のお手伝いもしてもらいましょう。
床掃除や掃除機がけなどは、しっかり行えばいい運動になります。
それは大変そうであれば、最初は以下のような簡単なことから始めてください。

・洗濯物を干す
・洗濯ものを取り込む(ピンチからとる)
・お風呂を洗う

ポイントは、「毎日やること」です。
定期的に繰り返すことで、基礎的な体力づくりができますし、乱れた生活リズムを整えることにもつながるでしょう。

ついつい私たち大人は、「子供は疲れない」とか「エネルギーがありあまっている」と考えがちですが、そんなことはありません。
特に、思春期になると第二次性徴によってホルモンの影響を受け始め、からだの中では過酷な変化が起こっています。 

そうしたからだの状態を把握し、適切なケアを行うことで、お子さんはみるみるうちに生気を取り戻していくでしょう。
(このとき、東洋医学が本当に役に立ちます!)

気力体力がありエネルギッシュな方には実感しにくいかもしれませんがが、たとえて言うなら「高熱で寝込んで動けなかったのが、体力が回復してくると寝ていられなくなる」ような感じでしょう。

ともかく、気力体力を取り戻したお子さんたちは、みずから新しい道へ進んでいくことができるのです。

「学校へ行かせる」ことを考えるよりも、まずお子さんのからだの状態に目を向け、体調を整えてあげてください。

自分のからだについて必要な情報を知ることが大切

「からだの状態を知り、整える」ことは、お子さんだけでなくもちろん大人にとっても重要です。
自分のカラダを観察し、体質を知ることで、自分にとって何が必要か不必要かということが理解できます。

実は、わたし自身体力がなく病弱でもあったので、学校へ通うのがつらい子どもでした。
高校2年の途中からは、教室内にいることがしんどすぎて、高校3年ではやっとこ卒業に足る日数をこなしてなんとか卒業。
その後の大学生活は、自由度が増したため体力的にも楽ちんで、非常に充実した時間を過ごすことができました。

ところが、会社員時代になると週6日の勤務になり、これは1年半で脱落。
疲労から、週の後半は身体が痙攣し始めていました。

そんなわたしでしたが、体調の悪さのおかげで鍼灸に出会い、週に数回のペースのおかげで長く仕事を継続できています。
「学校に通えない」彼・彼女たちの発する声にリアルに共感できるのは、ある意味この低空飛行の体質のおかげかもしれません。