「うちの子、先生やお友だちのお話をちゃんと聞きとれなくて困っています。
どうしたらよいですか?」
「家族相手だと何も問題がないのに、園や学校の先生のお話は聞き取れなくて、一斉指示に従えなかったり、お友だち同士の話についていけなかったりするんです……」
そんなご質問をいただくことがよくあります。
子どもが人の話をうまく聞き取れなかったり理解できなかったりするのは、難聴や「聞き取り困難症」などの疾患が原因の場合がありますが、東洋医学的には、以下のふたつの理由も考えられます。
・平衡感覚がまだ未熟である
・体内の水分処理がうまくいっていない:「水滞」や「水毒(すいどく)」
この場合は、トレーニングをすることで改善が期待できるでしょう。
中でもわたし・かとうようこがおすすめするのは以下のトレーニングです。
・【幼児向け】素足でロープ歩き
・【幼児〜10歳児向け】数字選び 初級編
・【10歳以上向け】数字選び 上級編
そこでこの記事では、「子どもの聞こえや理解」に悩む親御さんのために、こんなことをお伝えしていきます。
◎子どもがうまく聞き取り・理解できない理由とは
◎【年代別】子どもの聴覚・平衡感覚を育てるトレーニング
わかりやすいトレーニング動画も載せていますので、いますぐ取り組んでいただけます。
きっとあなたの不安やお悩みにお応えできると思いますので、ぜひ最後まで読んでみてください!
子どもがうまく聞き取り・理解できない理由とは

子どもの聞き取りや理解がうまくいかないのには、いくつかの原因が考えられます。
まずは「うちの子の場合はどんな原因が考えられる?」というところからみていきましょう。
病気や障害が原因の場合
第一に、西洋医学的な原因として、何らかの病気や障害が考えられます。
たとえば以下のようなケースです。
【子どもの聞こえが悪い原因の例】 ・聴力が低下している、いわゆる「難聴」である →先天性の難聴、おたふくかぜや中耳炎などによる難聴、心因性の難聴など、音自体が聞こえにくくなっている ・「聞き取り困難症」(聴覚情報処理障害/APD)である →音は聞こえているのに、言葉として認識できなかったり、理解できなかったりする ・発達障害がある →ASDやADHDなどの場合、耳から入った情報を処理するのが苦手な場合がある など |
これらに該当するかを調べるには、まず耳鼻科の病院で聞こえの検査を受けるといいでしょう。
もし難聴と診断されたら、原因に合わせた治療や指導を受けてください。
ただ、「聞き取り困難症」については、診断できる病院がまだ少なく、治療法も確立していません。
診断できる医師に相談しながら、生活しやすい対処法を考えていく必要があるでしょう。
「聞き取り困難症」を診断できる病院は、『当事者ニーズに基づいた聴覚情報処置障害診断と支援の手引きの開発』公式ホームページで「診断できる医療機関一覧」が公開されていますので、お近くの医療機関を探してみてください。
東洋医学で対応できる場合
一方で、特定の病気が見つからない場合もあるでしょう。
そういうケースを東洋医学的にみると、以下のふたつの原因が考えられます。
・平衡感覚がまだ未熟である
・体内の水分処理がうまくいっていない
→東洋医学で「水滞」とか「水毒(すいどく)」と呼ばれる症状
わたしは長年子どもたちをみてきて、これらの理由で聞き取りがうまくできないお子さんにはふたつの共通点があることに気づきました。
それは、
1)乗り物酔いをする
2)花粉症や鼻炎がある
ということです。
このふたつが該当するお子さんは、「平衡感覚の未発達」「水滞・水毒」が原因で聞き取りづらくなっている可能性があるでしょう。
「平衡感覚が未発達」「水滞・水毒」だとなぜ聞き取りにくくなるのか?
では、なぜ「平衡感覚が未発達」だったり「水滞・水毒」だったりする子どもは、聞き取りや理解がしにくくなるのでしょうか?
それは、人間にとって「雑多な音の中から自分に必要な情報を拾い上げ、理解する」という作業を一瞬のうちにこなすのは、実は難易度が高いものだからです。
わたしたち大人でも、広い場所や雑音の中では、人の話が聞き取りにくいことはありますよね。
ましてや子どもの聴覚は、15歳くらいまでは発達の途中です。
園児や小学生など、まだまだ未成熟な年齢の子どもたちにとっては、集団の中で言葉を聞き取って瞬時に理解するのはかなり難しいことなのです。
特に、からだの水分処理がうまくできていないと、聴覚がスムーズに成長しづらいとも言われています。
というのも、東洋医学で「耳」は、からだの水分を調節する役割を持つ「腎」と関係が深いとされているからです。
水分調節に問題が出る=「腎」に不調があると、「耳」の発達にも支障が出ます。
また、耳は平衡感覚をつかさどる器官でもあるので、聞こえに問題がある子どもは、平衡感覚にも影響が出ているケースがあるというわけです。
【年代別】子どもの聴覚・平衡感覚を育てるトレーニング

では、平衡感覚や聴覚が未成熟なために聞き取りや理解がうまくできないお子さんには、どんな改善法があるでしょうか?
効果が期待できるのは、以下のようなトレーニングです。
ビジョントレーニング | わたしたちが日常的に行っている、1)見る:目から情報をインプット2)理解する:脳で情報を処理する3)行動する:脳が処理した情報にもとづいて、口やからだを動かすという一連の作業がうまくできない人向けに、「目の運動能力」を高めることで認知や感覚統合を育てる※目に問題のあるお子さんの場合は、眼科医とご相談の上行ってください。 |
聴覚を刺激する遊び | 人の指示を聞いて動くゲームなどで、遊びながら「聞く力」と「理解力」を育てる |
平衡感覚を鍛える運動遊び | 片足立ちや片足けんけん、バランスボールなど、からだのバランスをとる運動遊びで平衡感覚を養う |
中でも特にわたしがおすすめしている運動を、「幼児向け」「幼児〜10歳児向け」「10歳以上向け」と年代別にわけてご紹介します!
【幼児向け】素足でロープ歩き
まず、小さいお子さんでもできる運動遊びとして、「素足でロープ歩き」をおすすめします。
これは、長いロープを床に置き、その上をはだしでゆっくり歩くという簡単なものですが、平衡感覚を養うのにとても効果的ですので、ぜひやってみてください。
【用意するもの】
・太さ1.2〜1.5cm程度、長さ3m程度のロープ
→ホームセンターやAmazonなどで購入できます。
【やり方】
1)ロープを部屋の床に置く
2)子どもにはだしでロープを踏みながらゆっくり歩かせる
3)バランスよく歩けるようになったら、しりとりをしながら歩かせる
【ポイント】
・ロープは最初はまっすぐに置き、慣れてきたらくねくね曲げたり円形にしたりと変化をつけると、より平衡感覚が鍛えられるでしょう。
・ただロープを踏むだけでなく、足の裏でロープをつかむようにして、素材の感覚を確かめながら、バランスを崩さないようにゆっくり歩かせましょう。
・小さい子には、「さあ、橋を渡るよー」など声掛けをしてあげるといいでしょう。
わたしが院長をしている鍼灸治療院クリスタでは、こんなふうにやってもらっています。
レベルを上げてしりとりをしながら歩くと、こんな感じです。
耳からの情報処理しつつからだのバランスをとるのは、大人でも難しいでしょう。
これも失敗あるあるなので、恐れず気にせず家族で楽しみながらやってみましょう!
聞き取りがうまくできないお子さんにとって、かなりいいトレーニングになるはずです。
【幼児〜10歳児向け】数字選び 初級編
小さいお子さんだけでなく、10歳くらいまでのお子さんにもおすすめなのが、「数字選び」です。
ボードなどに数字やマークをいくつか書いておき、家族が読み上げたものを子どもが選びます。
くわしいやり方は以下の通りです。
【用意するもの】
・ホワイトボード(冷蔵庫の扉でも可)や紙など、文字やマークが書けるもの
・ペン
【やり方】
1)ホワイトボードや紙などにマス目を4つ書く(「田」の字のように)
2)マス目それぞれに違う数字を書く(マークや文字でもOK)
3)家族が数字をランダムに読み上げる
4)子どもは読み上げられた数字をなるべく早く指差す
【ポイント】
・最初は4マスから始めて、慣れてきたらマスを増やしましょう。
・指差しに慣れたら、マグネットを移動させるようにすると難易度が上がります。
・両脚立ちではなく片脚立ち、クッションやトランポリンに立つなどすると、よりバランス感覚が鍛えられます。
この運動遊びは、ビジョントレーニング、聴覚・平衡感覚のトレーニング、姿勢保持、さらに指先コントロールまでトータルでできる欲張りなものです。
下の動画を見本にして、ぜひ大人も一緒にやってみてください!
【10歳以上向け】数字選び 上級編
小学校高学年のお子さんには、数字選びの難易度を上げてあげましょう。
用意するもの、やり方は同じですが、
・16マスから始める
・指差しではなくマグネットを数字の上に置き、なるべく早く移動させる
・1分間を目安にして、なるべく多くの回数をこなせるよう、繰り返しトレーニングする
というように、難易度を高くしてください。
毎日少しずつトレーニングすることで、きっとお子さんの生活の質が上がるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
お子さんの聞き取りにくさの原因と対処法がわかって、安心されたのではないでしょうか。
ではもう一度、ポイントをまとめておきましょう。
◎子どもがうまく聞き取り・理解ができないのは、以下が原因の場合がある
・平衡感覚がまだ未熟である
・体内の水分処理がうまくいっていない
→東洋医学で「水滞」とか「水毒(すいどく)」と呼ばれる症状
◎子どもの聴覚・平衡感覚を育てるのは、以下のトレーニングがおすすめ
・【幼児向け】素足でロープ歩き
・【幼児〜10歳児向け】数字選び 初級編
・【10歳以上向け】数字選び 上級編
また、「ビジョントレーニング」に興味のある方には、ビジョントレーニングの大御所北出 勝也先生の本が多数出ていますのでおすすめです。
とても参考になります。
これらのトレーニングで、あなたのお子さんがお話しを聞き取りやすく、理解できるようになりますよう願っています。
もし不安やわからないことがあれば、気軽にご相談ください!