「更年期になってから、すごく汗が出るようになって困る」
「暑くない時期にも突然汗が出て止まらなくなる」
そんなお悩みを持っている女性は多いでしょう。
更年期に汗が出るのは、脳の視床下部のせいです。
視床下部は自律神経をつかさどり、血圧、心拍、体温調節、発汗などの調整役も担っています。
更年期になってホルモンバランスが崩れることで、この調整もうまくいかなくなり、その症状のひとつとして「多汗」が起きるのです。
この汗をとめるには、東洋医学では以下のような方法をおすすめしています。
・汗が出たときの対処法:手のツボ「合谷(ごうこく)」を押す
・根本的な対処法:鍼灸や漢方を用いる
・日常生活での改善法:「頭寒足熱」を心がける
そこでこの記事では、更年期の汗に悩むあなたに、簡単にできる対策をお教えします。
◎更年期に汗が出る理由
◎東洋医学で更年期の汗を止める方法①ツボ
◎東洋医学で更年期の汗を止める方法②漢方
◎東洋医学で更年期の汗を止める方法③生活習慣
図などもまじえてわかりやすく説明していますので、今日からでも実践できるはずです。
この記事で、あなたが更年期を少しでも快適に乗り越えられるよう願っています!
【目次】
1.更年期に汗が出る理由

そもそも更年期になると、なぜ汗が出るのでしょうか?
それは、更年期に女性ホルモンの分泌が減少することで自律神経のバランスが乱れるからです。
自律神経をつかさどっているのは、脳の「視床下部」という部分です。
「自律神経の司令塔」とも呼ばれています。
【脳の視床下部】

そのため、更年期で卵巣のはたらきが衰えてくると、視床下部が脳下垂体を通じて卵巣に「女性ホルモンをもっと出せ!」と司令を出します。
【視床下部の司令でホルモンが分泌されるしくみ】

ところが、更年期になると視床下部がどんなに司令を出しても、卵巣からは十分なホルモン量が出ません。
そのため視床下部からは、また指令が飛ぶ……これが繰り返されるうちに、自律神経が乱れていくわけです。

この自律神経の乱れは、女性のからだにさまざまな影響を及ぼします。
というのも、視床下部は守備範囲が広く、生きていく上で大切な、
・血圧
・心拍
・体温調節
・発汗
なども担っているからです。
そのため、本来なら女性ホルモンには関係のない「発汗」や「体温調節」もコントロールが効かなくなり、汗がたくさん出るのです。
わたしの治療室ではこれを、「もらい事故」「近所の火事」と表現しています。
汗だけでなく、動悸などもよくある更年期症状ですが、これも同じしくみで起きるものです。
2.東洋医学で更年期の汗を止める方法①ツボ

では、更年期の汗を止めるにはどうすればいいのでしょうか?
簡単な対策として、まずはツボ押しをご紹介しましょう。
汗どめにおすすめのツボは「合谷(ごうこく)」です。
さまざまな効果が期待できるツボとして有名で、血圧の調整にも用いられます。
前述したように、血圧の司令塔は視床下部です。
つまりここを刺激することで、視床下部にはたらきかけることができ、更年期の多汗にも作用するのです。
合谷の場所は、以下の図を見てください。
【合谷(ごうこく)】

手の甲、親指と人差し指の骨の付け根のところにくぼみがあります。
そのくぼみの人差し指寄りのところにあるツボが合谷です。
汗が大量に出始めたら、このツボを反対側の手の親指の腹で5秒押し込むことを3回繰り返しましょう。ほてりがおさまり、汗の出過ぎを抑える効果が期待できます。
3.東洋医学で更年期の汗を止める方法②漢方

また、日頃からのケアには、鍼灸と漢方もとてもおすすめです。
鍼灸は、わたしの治療室クリスタのような鍼灸院に気軽にご相談ください。
あるいは市販のお灸を、先ほど説明したツボ・合谷にすえるのもいいでしょう。

漢方は、保険適応で処方されるので、かかりつけの婦人科や漢方内科の受診をおすすめします。
多汗に有効とされる漢方薬には、たとえば以下のようなものがあります。
| 漢方薬 | 効果・効能 |
|---|---|
| 加味逍遙散 (かみしょうようさん) | 体質虚弱な女性で、肩こり、疲れ、精神不安などの精神神経症状、便秘の傾向のある人の次の諸症 →冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症 |
| 桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん) | 比較的体力があり、下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴える人の次の諸症 →月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ |
| 桂枝茯苓丸料加薏苡仁 (けいしぶくりょうがんりょうかよくいにん) | 比較的体力があり、下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴える人の次の諸症 →にきび、しみ、手足のあれ(手足の湿疹・皮膚炎)、月経不順、血の道症 |
4.東洋医学で更年期の汗を止める方法③生活習慣

さらに、更年期の多汗対策として、日頃から心がけたいこともあります。
それは「頭寒足熱」。
よく学生が勉強の集中力を高める方法として言われますが、東洋医学ではそれだけでなく、自律神経を整えるものとして推奨されています。
というのも、空気や水はあたたかいものが上にのぼり、冷たいものが下にさがりますが、人間のからだも同様です。
熱はからだの上のほう、頭や顔にこもりやすく、それがほてり、発汗につながります。
この熱をなるべく上のほうにこもらせないためには、首まわりを風通しよくして、反対に足首をあたためることが大切です。
具体的には、
・首もとが詰まった服は避ける
・足首ウォーマーをつける
という方法をおすすめしています。
寒い季節には、タートルネックを着たりマフラーをぐるぐる巻いたりしがちですが、室内ではなるべく首まわりがゆったりした服装を心がけましょう。
まとめ
今回は、更年期の多汗の原因と対策についてお話ししました。
まとめると、
◎更年期に汗が出る理由は、自律神経をつかさどる脳の視床下部が、足りないホルモンを出させようと過剰にはたらきかけるため
◎更年期の多汗対策は、
・手のツボ「合谷」を押す
・鍼灸や漢方を用いる
・頭寒足熱を心がける
数々の体調不良を経験しているわたしが、更年期でいちばん不安に思ったこと。
それは、「理由がわからないこと」でした。
どうしてこうなるのか?先はどうなるのか?
そこが見えてこないと、闇を進んでいくような不安感をもってしまうんですね。
なので、更年期世代で汗に悩んでいるとしたら、視床下部の過剰な要求のせい!と理解しておきましょう(あくまでもイメージです)。
